小川もこの伝言板 一覧に戻る
投稿番号:101754  投稿日:2005年02月22日 02時35分31秒 パスワード
お名前:デーブ川崎
URL=http://www.owarai.to/
旅話■サンマーメンを食べながら

キーワード:旅 中華街 サンマーメン
地域 :関東

永らくご無沙汰してしまったお詫びに、時折、この間の旅先の話をしましょう。

        ***

そんなに遠くないむかしむかし。
さる親分のお誘いで横浜で夕食をご馳走になった時の話。

麦田町の中華料理屋「奇珍」へ。大正七年創業の店。
親分のオーダーで揚げワンタンとサンマーメンを頼む。
「この店はいいんだけどさ、何か頼むと倍出て来んだよナ」

まず、材木のように太い煮込みメンマが山のように来た。
甘辛く煮付けてあり、黒コショウを振ってある。
ビール、いや、紹興酒があいそうであります。
これだけで腹一杯になりそうなイキオイ。

ついで揚げワンタン。
昔、親分が子供の頃、揚げワンタン用のワンタンを干していたのをつまみ食いして随分叱られた、という想いでのメニュー。このときのご主人は創業者。

さて、そしたら今度は車蝦と葱の醤油炒めがこれまた山のように来た。
つまりこういうことだ。メンマと蝦、これが大人の顔に捧げられたメニュー。親分も分かっていて、ちゃんと煎餅だのバレンタインのチョコだのを車に積んでいる。

「コレ、割れてるんだけど、割れてる方が高いっていう煎餅なのよ。でも、安いモンなのよ、食ってみな」と山ほど入った大袋を女主人に渡す。

さて、サンマーメンが来た。サンマーとはモヤシのことである。
この店に来たら「サンマーメン」を食べなければいけない。「いつもサンマーメンだと飽きるから食べる」のがラーメンでありチャーシューメンなのだ。

奇珍は大正から店を構える中国人経営の店であるが、初代は本牧の港のあたりに最初、店を構えたのだそうだ。しかし、中国人は海岸から1000米までの距離に住んではならないという政令が出たときに、海岸からちょうど1000米にあたる麦田町に店を移したとのこと。

このとき、店主が中華街を選ばなかった、というのがミソ。親分曰く
「中華街は、もともと苦力(クーリー)の溜まり場で、その連中のために屋台が集まったのが始まりだから、中国人の中には中華街を嫌がってたのもいるんだよ」

親分によれば戦前から戦後にかけての中華街は横浜の経済を裏で支えた一大ブラックマーケットエリアで、スラムに財貨が渦を巻くというダイナミックな場所だったのだそうで、普通の人は恐くて寄りつかない場所だった。そこでは為替からエアチケットまであらゆる闇取引がおこなわれていた。到底、現在の観光化された中華街からは想像できない場所だったのだそうだ。

そういう場所を避けて、日本人社会と接しながら中華料理を提供している店もある、というわけだ。

親分の講義は続く。

「だいたいサ、ヨコハマって所は、金持ちが少ないんだよ。貧乏人ばっかりの町なんだよ」

いきなりスゴい物言いをする。これぞハマの喋り方。

「だって、白系ロシア人難民とかチャイニーズポーチュギーズ(マカオから来たポルトガル人と中国人のハーフ)とか、中国人とか、みんなヨコハマに逃げ延びて来たんだもの。日本人だって、みんなどこからかやってきた連中さ。もともとの横浜の人間なんてほとんど居ない。みんなここで腰掛けて、いずれアメリカにでも行こうと思ってるわけだ。横浜についていろんなイメージがあるかもしれないけど、実はそんな町なんだナ。いい街だろ?」

フローが活発に動いている時は勢いがあるが、ストックの精神がないから経済が停滞すると、すぐに枯れ始める、というわけだ。

「横浜という町はとにかくカネのことでもなんでもストレートに話すからね、どこで会ってもすぐわかるよ。芸能界なんかではそういうのはタブーみたいなもんだから、随分嫌われるんだ。生意気だって言って。それに、何十カ国から、それぞれ生き方も文化も全く違う連中が逃げ延びて暮らしてきたから、互いに干渉するってことがない。みんなそれぞれの方法で好きにやれ、って風土ができたんだな」

独特の乾いた風土の由来。

「ま、観光イメージの横浜と現実は随分違うってことさ。
                 でも・・・・最高だろ?」

     ***

最後の一言でグッと好きになりました。
ではまた。

[1]TAKEGONさんからのコメント(2005年02月22日 06時42分35秒 )
URL=http://tkg-hus.hp.infoseek.co.jp/
パスワード
横浜かー 行ったことないなーって思ったら一度だけあったです。
父の弟、つまり叔父さんなんだけど、葬式に行きました。
「浜」っていうから海辺の街を想像していったけどずいぶん内陸の新興住宅街のようなところで
最寄り駅から15分くらい走ったような気がする。

>親分の講義は続く。
浅田次郎風の短編小説を読んだ気分でした。
サンマーメン おれも食ってみたいっす。

[2]デーブ川崎隆章さんからのコメント(2005年02月22日 11時56分48秒 )
URL=http://plaza.rakuten.co.jp/davekawasaki/
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「一度だけ葬式で行った街」と言うと、なんだかそれだけで物語の舞台になりそうなヒトコトですな。

いやー、横浜は内陸部が案外深い市ですよ。
こんなとこまで?っていうくらい。

そうだなぁ、小笠原諸島が「ここも東京都なの?」というくらいです(笑)。
とはいえ、小笠原は、東京の誇りです。
日本でも数少ないラム酒の産地で。

[3]小川もこさんからのコメント(2005年02月22日 12時49分41秒 )
URL=http://djmoko.com/
パスワード
 まぁまぁデーブさんったら、長らくフーテンの寅さんしてたと思ったら、
帰ってくるなり 入り浸りで♪

おにいちゃん、またふらっといなくなっちゃわないように。
byさくらからのお願い。

それから、フォーミラテーマの「おさかな天国」にも御参加くださいよ〜
ま。投稿して下さっているのが まんま「おさかな天国」なサンマ話題ではあるんですけどね。

[4]デーブ川崎隆章さんからのコメント(2005年02月22日 16時06分10秒 )
URL=http://plaza.rakuten.co.jp/davekawasaki/
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もこ姐さま、ご無沙汰失礼いたしました。

いやー、サンマのことを書いてから気がつきました。
グーのゼンですね。俗に言う「偶然」。

寅も、大きくなって帰ってまいりました。
いえ、体形のことを言ってるんじゃぁござんせん。
ドラマじゃありませんけれど「優しい時間」を求めて帰ってきた、という
そんなワケなんであります。

以後万端、どうぞヨロシクおねがいしまーす。

[5]Karlさんからのコメント(2006年05月15日 15時38分09秒 )
URL=http://tzxpxhat.com/grcw/mkim.html
管理者によりコメントは削除されました。 2006年05月15日 16時57分22秒

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